2013.12.19 最良音質のCDを求めて
CDRドライブの旧型でいろいろ調べてみたがもうこれ以上良いものは入手できないだろうと言うところまで来た。先日のフィリップスCDRドライブはどうにもならなかったのでがっかりした。実用と入手面での最高のものをともかく見つけたい思いが全てだった。最後の興味は大型の初期のCDRドライブの次に、コンピューター組み込みタイプの初期モデルであるリコー製のもの。これも初期のものでとても期待していた。でもだめだった。古いからいいのではないのは当然だが試してみるまではわからないという気持ちだった。等倍速の読み書きの出来る条件に限った結果であったが機種は1機種に絞られた。電源回路を改良することと、オーバーホールの結果満足できる音質になってきた。もちろんWindows98,接続はSCSIになるとは思ってもみなかったが、音質優先だとそのようになってしまった。後考えられることはCDRドライブのクロックをGPSクロックにすることくらいだろう。大幅な音質アップの手はそれくらいしか残っていない。とはいうものの、この状態で手持ちのマスターをGPSクロックでリマスターしてCDRドライブで焼いたCDRはマスターCDRに優れる部分がたくさんある。マスターと同等という表現ではなくマスターをしのぐ初めての経験だ。
自分だけの喜びではなく、たくさんの方にこの音を知って欲しい気持ちでいっぱいである。
来年はなんとかこの夢を実現できないかどうか考えてみることにする。
実現すれば、最近はやりの高価なガラスCDやリマスターCDとは比較にならないCDRが聴いてもらえると思う。アナログディスクの初期盤のようなものというより、アナログディスクのラッカー盤に例えてもいいと言えるくらいの自信だ。
終わり
2013.12.10
ブラームス交響曲3番
MYTHOSレーベルの曲目リストの中で興味のあるものがあった。
ブラームスの交響曲3番である。演奏はクナッパーブッシュ、ベルリンフィルだ。
実は恥ずかしい話だがクナッパーブッシュについては顔が怖そうなのでワグナーなどが得意、まさかブラームスなんか振っているとは思ってなかった。まあ私のクラシック聴きますというのはそのくらいのレベルなんだから当然かも知れない。入手して驚いた、耳が釘付けという表現があるのかどうか知らないが、もうびっくり、こんな凄い演奏があったのか。器の大きさ、表現、音質どれも素晴らしい。1944年の録音ですよ。
何度も聴いた、メインシステム、ラジカセ他、そしてカーステレオ(安物というか標準装備)、驚くべきはカーステレオでの再生だ。まさかブラームスの交響曲がカーステレオで鳴るとは。だいたいクラシックはカーステレオで聴くことはまずない、ダイナミックレンジの大きなものはだめだ。カーステレオマニアの高額な装置でベンツの上級車種なら聴けるのかも知れないがホンダのフィットではあきらめるのが普通である。
まてよ、ひょっとしてこのCD盤、ミソスの音がいいからカーステレオで聴けたのか?このくらいミソスの音は素晴らしいのである。装置を選ばないCDなんて最高である。
早速宇野さんに電話した。クナッパーブッシュのブラームスの3番が凄い。びっくりしましたと言うと、それはウイーンフィルかベルリンフィルのどっちかい?と聞かれた。
一瞬間違ってウイーンフィルですと言ってしまったら、それよりベルリンフイルのほうが圧倒的に良いよ、すぐ聴き給えで終わった。なんとなく腑に落ちず、CDジャケットを見るとベルリンフィルではないか。やっぱりそろそろ脳細胞の数が減ってきているのは間違いない。すぐに電話をかけた。間違いでした、ベルリンフィルのほうでしたとやれやれの思いで訂正、しかし食い違うのは演奏でなくて音質だ。凄く悪い音の録音だと言われる。ではこちらでもう一度マスタリングして送りますと言って電話を切った。
何日か経過してそのままでも充分な音質のミソスのCDR(注:ミソス盤は普通はプレスCDでは無くてCDRである、それも最良クラスと並のクラスで値段の差がある。多分入手したクナッパーブッシュのそれは並品である。)このミソスの音質をさらに良くしてやろうとスチューダー727にGPSクロックを接続してCCV-5に接続して再びGPSクロックでダブルクロックをやった。そのSPDIF信号を業務用のCDRレコーダーでCDRを焼いた。そのマスターCDRをパソコンにリッピング、ファイルを現時点で最良と思えるとても古いCDRドライブを使い等倍速で焼いた。これを宇野さんに送った。
早速翌日電話があった。素晴らしいよ、自分の持っているこの演奏のCDは酷い音だ。全く別物なんで驚いているとのこと。このCDRの番号を教えて欲しい,すぐ入手したいとのこと。私のリマスタリングテクニックをきっと疑っているのだ。もちろん原盤と比べていただくほうがいい。最後にあなたもフレージングが解るようになったんだね、もっと早く私の言うことを聞いていたら今頃こんなことを言い出さなかったのにだって。まあいいや、音楽評論家の大先生に誉めていただいたのだから。
2013.12.5 最良音質のCDを求めて
中島平太郎氏が手がけられたソニー製業務用デジタル録音機器の音のあまりの酷さに私がショックを受けた話である。この一件があるので中島氏がソニーで最初の民生用CDプレーヤーの音質が最高だと言われても全面的に信用するわけには行かない。しかし音忠質では前述の最初期CDRドライブと同じで最高クラスなのだろう。ではその頃のCDプレーヤーやデジタル機器でソニーの最高クラスより上のものはあったのだろうか?それはフィリップス製の光ピックアップを採用したフィリップスのプロ機器や、スチューダー、EMTなどのCDプレーヤーだ。音質、もちろん音忠質、音楽質のどちらもが比較するものがない最高クラスである。日本製のCDプレーヤーに欠落した音忠質も最高クラスなのである。ここまで解ってくると欲しいものが出てくる。フィリップス製の光ピックアップを備えるCDドライブがそれだ。必死で探してオークションでいとも簡単に見つかった。フィリップスのCDRドライブがあったのである。等倍速で読み書きが可能な仕様である。大喜びで入手したフィリップス製のCDRドライブの概観は天板の鉄板のデザインが一般的な日本製のそれとは異なってなんとなく音質がよさそうに見えた。ところが音を聴いてがっかりした。保証管理用のシールを破って内部を見たとたんに謎が解けた。出てきたのは日本製のドライブであった。それも例の優れた最初期のCDRドライブメーカーのものではなくごく一般的な電子機器製造メーカーのOEM品だったのだ。光ピックアップまでもが本物のフィリップス製のCDRドライブは存在しなかったのだろうか?物理的、特性的、コストパーフォーマンスで比較すればフィリップス製のドライブでは日本製には勝ち目が無かったことは想像できるがそれにしても残念なことだ。
続く
2013.12.2 最良音質のCDを求めて
ここまで来て先日書いたオーディオアミーゴ誌別冊で中島平太郎氏が述べておられたこと。
CDプレーヤーは一番最初のモデルが音質に優れるという話とCDRドライブも全く同じ経緯をたどったと言っても間違いではないだろう。なんとも情けない話だ。オーディオアミーゴで思い出したが、私が初めて市販CDのための録音をした時の話をオーディオアミーゴ誌 1999年第7号の拙文から以下抜粋させていただくことにする。改めて読んで見るとスチューダーのアナログレコーダーとデジタルレコーダーの音質差に音忠質と音楽質をすでに感じていたのが解った。
《 マイクロフォンは当然のようにノイマン、ミクサーはスチューダーですが、これらは現役のものを仕方なく選んだという気持ちでした。そして一番大事な録音機、これは当時すでに話題になっていましたが、DATを敬遠してスチューダーのデジタル・レコーダーとアナログ・レコーダーを対決させました。ともかく、どちらが真実かを確かめたい一心でした。なにしろ、録音機では世界最高(その時代の現役機の意)の、アナログ対デジタル対決だったのですから。
アナログ録音とデジタル録音の対決
その時の印象をそのまま表現しますと、アナログ・レコーダーはライン--- 録音時と同じ接続で、録音せずマイクの拾った音をそのままモニター・スピーカーでヒヤリングするリアルタイムのモニターとほとんど同じ音で、さすがはプロ用スチューダーだと思いました。しかし、欠点を見いだす努力もしてみました。アナログのテープスピードは最高速の76cm/sec.ですが、見ていてテープが伸びないか切れないか、まさに素人の心配をしたのを覚えています。
欠点は生(ライン)よりも、音が甘くなることです。38cm/sec.ではもっと甘くなります。だけど、その甘さは比較するからであって、比較しなければ忘れて(記憶しても時間が経つと)しまうレベルかもしれない。そこで、あくまでも自分だけの評価による点数ですが、ラインを百点満点として、76cm/sec.の録音再生の音は、総合評価で95点というところでした。 その減点の5点は、完全ではないというだけの意味で、自分のオーディオ装置の再生音の音質レベルからすると、とてつもなく高いレベルです。その自分の基準を忘れて、なんとか欠点を見つけようと努力した結果の減点5点でした。
もう一方は、当時最新のデジタル録音装置。それもスチューダーの2トラックです。これはすごいハイファイです。欠点がすぐには見つかりません。あたかも、生そのままの鮮度です。自分の親しんでいる音楽の種類が違っていたら、また、オーディオ的なテスト音、いわゆる鐘の音やガラスの割れるおとや、雷の鳴る音や機関車の音など、音楽でない音をテストにつかっていたら、文句なしに99点を入れていたでしょう。とにかく生に限りなく近かったのです。
しかし、減点の1点これが大問題でした。アナログレコーダーの減点5点は、主に鮮度-----マスターテープとコピーレコードの差、オリジナルLPと日本プレスLPとの差のような違いです。ところが、デジタル・レコーダーの減点の1点は、なにかよく判らない減点、わかっているのは、鮮度に関する減点ではないということだけです。当時の私の録音メモから、そのままぬきだしてみます。
1991年4月「・・・音はとてもクリアーで、生といってもよいくらいに録音できて驚く。さすがにスチューダーで、かつ最近のデジタル機だ。でも何かが違う。無理やり喩えれば、その音の持つ雰囲気は、SFの宇宙船みたいだ。さすがに新しい。
ヨーロッパのレーベルでは、もはやアナログ録音にこだわる人は少なく、現実にはデジタル・レコーダーを使用しているけど、宇宙船を想像させない録音も沢山ある。これは彼らの音楽文化の高さのせいか。マイクセッティングや録音時のノーハウで、宇宙船の外壁を石や木材に見えるようにしているのだと思われる。いま彼らと競うのは止めることにする。そして宇宙船は止めて、プロペラ機の登場に期待する。」
私の音質採点では
今このときの印象を補足してみると、鮮度はあきらかにデジタル機が上で、減点わずか1点の99点。76cm/sec.といえども、アナログ機には減点5点があったという事実。総合点ではデジタルの勝ちです。アナログ・レコーダーは音質は問題なく、鮮度で減点5点。デジタル・レコーダーは鮮度は問題なく、音楽で減点1点です。
いわゆるHiFiでは、デジタル・レコーダーの勝ちです。しかし、この減点1点は、音楽に深く関わりのあるものです。HiFiでは、デジタル・レコーダーは生そっくりですが、音楽ではアナログ・レコーダーが生そっくりです。音楽での1点の減数は、録音する音楽の種類、採点者によって大きく変わると思います。HiFiでの減点5点は、音楽の種類や採点者によって、それほど変わらないと思います。 9年たったいまでも、このときの私の採点はさほど間違っているとはおもえません。
(注:抜粋なので前後関係が解りにくくて申し訳ありません。生まれて初めてCD化のための録音をしたのはクラシックギターでしたがその時はアナログ録音したマスターテープをスタジオに渡しましたのでデジタル化の過程は立ち会っていません。CDになって劣化した音にがっかりしたのは確かです。2回目のウイーン国立歌劇の歌手の録音は同じくアナログ録音でしたが、その時はアナログマスターのCD化の過程に立会いました。以下がその時の話です。アナログマスターの音が当時スタジオでは標準的な装置であったUマチックレコーダーによるPCMデジタル化で破壊された音源の初体験でした。CDになる過程のはじまり、デジタルマスターを聴いてショックを受けたわけです。このデジタルマスターが市販のCDになったわけですから一般の皆さんがどれほどアナログマスターからほど遠い音を聴かれているのか文章ではお伝えできません。)
「しかし現実は厳しく、マスターテープを聴いて、それが基準になっている耳には、CDを作成する直前の、業務用のUマチック・デジタル・マスターへ、アナログをデジタルに変換したときの失望と驚き。そしてデジタル編集は、まさに地獄だった。プロ用デジタル機器を駆使した編集の工程が、ひとつ進むたびに、一体、私はなんのために、これほどの努力をしたのか?と思う。
この音質の劣化を認めると、まさに私の努力が水泡になる。録音にたずさわったスタッフの全員が、同じ気持だったと思う。このような現実を知らなかったのは、前回の録音の守備範囲が、デジタル変換の絡む、編集作業からだ。
いままではCDとアナログ・ディスクを比較することで、アナログはこんな音、デジタルはこんな音だと、区別して理解していたが、それを遥かに越える体験である。
しかし、今回の経験でクラシック音楽というジャンルに限定していえば、業務用のアナログ機器に比べて、現段階のデジタル機器は、あまりにも大きな差があるものだと認めざるを得ない。」 》
続く
2013.11.25 最良音質のCDを求めて
CDRメディアは需要はガタ減りなので今後優れたものが低コストで製造されることは望めない。なにしろ最高50倍速以上の超高速で出来るだけ早く読み出し、書き込みを短時間で終える目的のために高感度な仕様が求められるので音楽だけのための等倍速なんて数の内に入らないからであろう。音楽を大切に思う人達はアナログレコードの初期盤が何十万というとてつもない価格になろうとその価値のために手に入れようとする。宝物に対する対価ではなくて、際立って良い音のためである。CDRの等倍速と倍速も同じことだ。言い換えればアナログレコードのプレス回数増による音質劣化が好ましくないものと感じる方にとってはCDRの等倍速による読み書きはとても大切なことなのである。録音ではアマチュアである私が嘆くくらいだから音楽を愛されるプロの録音関係者は本当に悔しい思いをしておられるに違いない。PCオーディオの世界が主流になって個体メモリーやハードディスクがビジネス的にCDRに取って代わった結果はであるが、パソコンやメモリーの音質がCDRより優れるという理由で代わった訳ではないのである。倍速のため音質を犠牲にしたCDRやそれより遥かに音質的に劣る市販のプレスCDよりパソコンのハードディスクやメモリーが少々音質が良かったのに過ぎない。CD盤の材質を透明度の高いものに変えたり、高価な材料を採用するよりもっともっと大事なことがなおざりにされているのである。加えて前時代的なものになりつつあるCDより新しいイメージのハイビットハイサンプリングやDSDがCDより遥かに優れているような錯覚を期待するのが現実のオーディオマーケットなのであろう。大切な本質がなおざりにされて表面が先行するのはオーディオマーケットだけでは無いのはもちろんだが、これは文化に関わる重要なことなのだ。
続く
2013.11.20 最良音質のCDを求めて
CDリッピングについての続き:
この話題についてはCLVとCAVの読み込みの音質差を比較するというところまでで止まってしまっていた。同じような速度での読み込みならCLVのほうが好ましい音質であると結論づけようと思っていたがその後いろいろなことが判明、それほど単純なことではないことが解りだした。
結論として音質に関わるのはハード、メディア、メソドの全てではあるが困ったことにハードが最も重要だったことだ。それもCDRの歴史で初期のドライブの音質が秀でておりサポート、修理はとっくに打ち切られている事実と、それらの優秀な初期のモデルはプロの業界では常識であること。また後年それらのモデルを意識して開発されたモデルは同業他社のCDドライブと比較すれば優秀だが初期のモデルと比較すれば音質での能力は雲泥の差がある事実。後年の音質を意識したモデルもすでに発売中止でありサポートも間もなく終了することであろう。ということは現実にオーディオマニアが入手できる全てのドライブ類は音質的に考える最良とは思えないものばかりになってしまったということである。
これらの決定的事実を知らされる途中であることに気づいた。音質という言葉である。今回の経験ではPCオーディオを深く追求されている方々の言われる音質については私の思う音質と大きく食い違うことはなかった。しかし音質についての価値観が全て一致するわけではない、困ったことだ。またハイエンドオーディオでの音質の評価とPCオーディオの方々の評価もこれまた異なるわけではない。
それなら解決策は、言葉を改めるしかないのではないか?
では音質を二つに分けて
1) 音忠質 音の形の忠実度、分解とか周波数とか歪、鮮度と言ってもいいのでは? オーディオでの音質は感じるに8割がたこの意味である。外国語のハイフィディリティーの意味のニュアンスのようにも思える。
2) 音楽質 鮮度とか忠実度とかの音の形ではなく演奏が正しく伝えられているかどうかに関係する質。オーディオでなくて音楽の演奏の良い悪いの意味に近い。音楽のジャンルにより微妙に優劣は異なる。例えば邦楽と洋楽では全て一致しないのこともある。
今回はつくづくそう感じた。
例えばCDRにはたくさんの種類があるし、あった。それらのCDRの中で優秀なものについて音忠質ではPCオーディオの方達の判断と私の判断はほぼ一致する。しかし音楽質については全て一致するとは言えない。とくにCDRメディアメーカーが過去に音楽用として販売した製品には本件が大きく関わっている。多くの製品が音忠質では優秀なのに、音楽質では良くないものが殆どであること。不思議なことに音楽専用ではなくデーター用に音忠質と音楽質の両面で優秀なものがあることだ。これはオーディオ界の製品での音質事情と全く同じである。
続く
2013.11.12
おかげ様でオーディオセッションは無事終了しました。同じブースのオーディオメーカーさんからどれほど嫌がられるのか覚悟の上で写真のような平面バッフルスピーカーとビクターのミニコンポのセンター(CD,USBメモリー再生可能、15W X 2アンプ部)をスピーカーリベラメンテ SPL-2.6にて接続しました。スピーカーリベラメンテだけでどれほどの効果があるかを知っていただきたかったからです。スピーカーユニットは日本橋のパーツ屋さんの店頭にあった8cm径のものでペアで700円です。テレビかラジカセ用のメーカー放出品だと思います。バッフル板は600mm x 900mmの5.5mm厚シナベニヤでペラペラのものが2枚。合計およそ¥2000円位のコスト。
オーディオショーの中でこんなものでまともな再生が出来るのかと思われるおよそハイエンドオーディオには場違いな展示です。ところがこの組み合わせから(TADの超弩級システムよりもQUADのコンデンサスピーカよりも「アレ」の方がいい音なんだから)とか(使用中のロンドンウエスタンの中音ホーンの音と比較できるくらいの音?)と来場された方が驚かれた音が本当にでたのです。
もちろんスピーカーリベラメンテの力によるところは大きいですが、このジャンク品のスピーカーユニットと薄いベニヤ板の鳴きは手ごたえがありました。SPユニットの振動板の調整と板の共振のコントロールには20時間はかかっています。いつわりなしで我が生涯で手がけた最高のコストパーフォーマンスと骨のある鳴りっぷりのスピーカーシステムです。オークションに出したら値打ちを知らない人にとってはゴミにしか見えないのは間違いないです。でもお役目の終わったところで使用の予定もないのでどなたか聴かれた方にもらっていただきたいと思います。もちろん話を信じられてどうしても欲しいと思われる方でもかまいません。現場で写真を撮られたり、寸法を測られた方は3名ほどおられました。残念ですが全く同じ音のヴァイオリンやギターが造れないのと同様で寸法を全く同じにして作成されてもこの音は出ないと断言できます。
長くなりましたが、ご希望の方はご面倒ですがハガキでスピーカー希望と書いてインフラノイズ社までお送りください。11月いっぱいで締めきって抽選で一名様を選びお送りします。
2013.10.22
今週の土曜日と差し迫ったリベラメンテの試聴会ですが、河口無線の担当の平さんに決めていただいた機材を変更なく使いたいと思います。理由はあらかじめインフラノイズがセッティングをするより行き当たりばったりの進行方法がSPリベラメンテの実力を知っていただけるチャンスだと考えるからです。
願わくばお越しの皆様が超高価なケーブルや有名なプロ用ケーブル、自作ケーブルなどをお持ちいただいて比較してくださるお祭り騒ぎを期待するのですが? これはやっぱり無理なんでしょうね。
鈴鹿サーキットを借り切って、ランボルギーニやフェラーリ、ポルシェを集めて、おもむろに今人気のトヨタの86?というスポーツカーでぶっちぎったところで超高級車に乗ってこられた方はだれ一人喜ばないのと同じですから。
でも外国製の高級品を国産が.........と思ってくださる方々に期待します。
応援よろしくお願いします。
2013.10.21 最良音質のCDを求めて
公私とも忙しくて更新できなかったがやっと可能となったので久しぶりで大事な情報を書こう。
CDをリッピングしてWAVとしてパソコンに取り込むためのドライヴユニットは手持ちで知らない間に20台くらいに増えてしまった。読み込みも書き込みもPLEXTOR製の初期のものが音質的に最も優れているのは確認している。これは先日中島平太郎氏が述べていた初期のCDプレーヤーが一番優れていると言われたことと一致している。物理的には数倍速で読んだり書いたりするより等倍で行うのが音質的に優れるのは想像できるし、これが覆ることはないのは確認済みである。2倍と数倍速では速度が増加するにつれだんだん悪くなるのは当然である。ところが2倍と等倍では雲泥の差となる。
完全でないものどうしなら程度の差はあるがどのあたりで妥協するかという考えが生まれる。オーディオ機器というのはだいたいこんなものであるし、オーディオに限ったことではなくて感覚的なものはだいたいがそうなるようだ。
CDR盤の優れたものが一般CDR盤と比べて大きな差があるのと同じく等倍速と倍速では比較のしようがない差がついてしまう。ここまでは解っていたが先日PLEXTOR PREMIUMを入手したので前から気になっていたことを試してみた。残念ながらこの機種は中期のもので等倍速はない。それで一番遅い速度でワインガルトナー、ウイーンフィルのベートーベンをリッピングしてみた。
土曜日に全く同じ条件でCLVでの読み出しとCAVでの読み出しを行いそのファイルをUSBメモリーにしておいた。先ほどそれを事務所の装置で比較して驚いた。これはとんでもない差がある。プロフェッショナルオーディオの世界では何人の方がこの差に気づいておられるのだろうか?もしこのブログを読まれたのならぜひ追試して欲しい。それほど根本的な大切なことだと考えるので即公開とした。
取り合えずの緊急報告なので試聴結果は次回。
続く
2013.10.8
西野さんがリベラメンテで聴くリベラタンゴという題名でピアソラのことを書いておられた。私もピアソラについては同様に感じるところがある。
CDショップのワゴンセールでピアソラを見つけたのがピアソラとの出会いだった。もともとタンゴは好きで中学生の頃から浅く聴いていた。そのCDであるがボックスの色合いが地味なので売れ残ったと思った。
10枚入りで確か2000円くらいだったので凄く得をした気持ちで喜び帰宅した。再生してみるとそれがなかなかうまく鳴らない。曲に親しむのも先決かなと思い通勤でのカーステレオで何度か試みた。でもわけが解らず、なぜか頭痛が起きる。長い間お蔵入りになっていた。
いつか値打ちが解りそうな感触だけはあった。
友人でモダンジャズしか聴かない人がいる。彼もピアソラは好きみたいなのでうまく鳴るかどうかたずねてみた。娘さんと車に乗るときにピアソラをかけると決まってお父さんそれはいやだから止めてくれと何度か言われたらしい。彼はいやでもないらしく、不思議そうな顔で話してくれた。
西野さんの言われるようにピアソラには何か影の世界のものがある。だから当然音には影のハーモニーがあるに違いない。そればかりではなくて表のハーモニーと混在している。まさにカオスの音楽だ。当然に再生は難しいのだろう。ジャズが鳴るとか、クラシックが鳴るとかいうレベルではなかった。
色づけがないとか、無色透明の音とかでは片付かないなにかがある。
西野さんはスピーカーリベラメンテを通してピアソラのカオスを見つけられたに違いない。
我が家でもこの2-3年でやっと頭痛のしないピアソラの音が出だしている。
ピアソラの弾くバンドネオンはジャバラ部分がすぐ壊れるという話を読んだことがある。
楽器が壊れるほどの表現をしているのだ。それはパルスの差となってくる。
トランジェントなんて言葉では甘すぎると思う。パルスの再生がきちんと出来ないと
寂寥も頭痛に化けてしまうのかも知れない。
GPSとリベラメンテはピアソラとは無縁ではなかったのだ。
2013.9.26
一ヶ月後の大阪日本橋河口無線、ハイフィデリティ試聴会デモストレーションの内容についてです。
リベラメンテシリーズの実力を知っていただくために今回はインフラノイズのオーディオ製品は使わず
他社オーディオ製品との組み合わせにて試聴いただくことを考えました。
超ハイエンド機器から普及機器まで、特に組み合わせは前もって考えることなく行き当たりばったりでやってみたいと思います。また比較にならないような高価なケーブルとの比較試聴もやってみたいと思っております。
ぜひお越しの折はご愛用のケーブルをお持ちいただいて比較試聴をお楽しみください。
2013.9.26
久しぶりでオーディオアミーゴ誌が出た。タブロイド版の新聞みたいなかたちであるが頁数はわずかでむしろカタログみたいな感じである。内容は中島平太郎氏のデジタルオーディオの真実1、相島技研、ベルエアー・サウンドリサーチ、スフォルツァート,ヴィンテージ・ジョインなど通常のオーディオ誌では出てこないようなところばかりである。先代の編集長からのご縁で今回はインフラノイズの記事は無しで広告だけを掲載いただいた。
トップの記事はなかなか大変なことが書いてある。デジタルオーディオは、原理通りやらないといい音がしないというタイトルだ。
中島平太郎氏といえばNHK技術研究所でデジタル録音再生の中心的人物で後にSONYでデジタルオーディオ製品を開発していた方である。その人が今頃になってここにとんでもないことを書いておられる。
「(前略)最初に発売したソニーの機器は、CDP-101というCDプレーヤーですが、名器でした。価格は16万8,000円という金額でしたが、最初の機器というのは、ほんとうに念入りに作っています。量産じゃなしに、手作りで作っていますから。悪いものを最初に出したら、CDの音質が批判されますからね。われわれとフィリップスが丁々発止やって作った規格を、最良の状態で出したわけですから、われわれのソニーの機器と、フィリップスのそれも、ちゃんとよくできていると思います。とにかく部品は、半導体レーザーからレンズから全部、原価割れするくらいのいいものを使いました。ジッターがうまく完全に働くように、最もいい状態で出したのがこの最初の機器です。(中略)
いや、だんだんよくなってきたんじゃなく、小さくしたり、低価格にしたりして、後になってできた機器のほうがかえってレベルダウンしたのではないかと思います。最初の機器というのは、ほんとに念入りに作っていましたから、ほんとにいい音がしています。私は、今でもこの101は重宝しています。
(後略)」
最初に出た機器の部品は原価割れするくらいのいい物を使っているから音が良いと言われるのは、やっぱりそうだったのかと思いながら理解出来る。フィリップスやスチューダーの最初の機器が素晴らしいものだったことを考えると納得のいく話である。
でもこの方は日本でのデジタル機器開発の歴史では中心的人物なのだ。そういう方が今になってそんなことを言われるのだからオーディオでいろいろなデジタル機器を買ってきた人達はいったいどう考えられるのだろうか?
なおこのオーディオアミーゴ別冊オーディオマップ
価格¥500(送料消費税込み)は
ブック・プランナーズ/糸瓜書房
〒141-0033 東京都品川区西品川1-10-1 1F
電話、FAX 03-3493-3554 担当:依田さん
またオーディオアミーゴ誌のバックナンバーは9号から12号は在庫があるとのことです。
電子ブックでは1号から8号までがアカシックライブラリーで発売されるとのことです。
2013.9.12
ピアノを弾くと言うにはまだまだ気がひけるので、ピアノを触っていますという表現が適切でしょうね。調律も道具一式持っていますのでそちらのほうも触るというレベルです。なにしろ調律初めてから時間がかかり過ぎて最後になる頃には最初のが狂ってしまうのです。ピアノ演奏のほうは触ることも始めた高齢ではいくら頑張っても音大卒業のレベルまではたどり着かないということも聞いてます。でもそれは演奏技術の問題であって云々と言いたいのですが、だんだん解ってきましたね。弾きたい曲なのに必要なテンポでは弾けない、なぜなら速く弾くには技術がいるのです。本気で毎日3時間練習したら3年後には音大卒業のレベルになるかどうかは自分では解りません。でもそれは不可能、年齢とか脳の劣化だけでなくて毎日3時間の練習は今の生活では無理です。ではあきらめましょうと思うのも悔しくてと思いながら鍵盤を触っております。
来年の発表会の曲を決めてから4ヶ月が過ぎました。ショパンのワルツ、op.69-2です。選んだ理由は昔から好きな曲だし、テンポがModeratoなのでなんとかなるかと思ったからです。全体の7割ほど弾けるようになりましたが、ゆっくりなら難しい曲でも弾けると思ったのが思い上がりだとやっと気づきました。テンポは遅くとも右手のメロディーに右手だけの和音がついてしかも途中で転調します。速い曲でなければ音大卒の技術なしでも何とかなると思うのは間違いでありました。でも頑張っております。自分は弾けなくても人様の上手下手は解り過ぎますのでまあいいかと自分で自分を慰めております。
まあ面白くも無い私事はこれで終りましょう。
課題曲は最初はマネになるのは嫌だと、同曲の録音は聴かないようにしておりましたがそろそろかとYoutubeで検索、有名な曲ですのでたくさんアップされています。目立つのはピアノ発表会の小学校低学年くらいの幼児の演奏です。もちろん大人の演奏もたくさんあります。皆さんはYoutubeにアップされるくらいですから上手です。でも上手とは演奏技術がある、間違わないで楽譜どおり弾けるという意味です。言葉を変えて演奏はどうかと問われるなら殆どの皆さんは下手です、音楽になってませんとしか言いようがありません。本当にこれはどうしたことなんでしょうか?不思議なことに小学校低学年の子供でも日本人でない東洋人や白人はちゃんと音楽になっています。最近は日本人でも素晴らしい若い演奏家がたくさん出てきましたのでそんなに嘆く必要はないのかもしれませんが、幼児の音楽教育についてはまだまだ問題が残っているような気がしました。日本人特有の問題なのか?音楽教育の問題なのかは解りません。
アマチュアの演奏ではなく本職のピアニストではどうでしょうか?現役のピアニストの弾くこの曲は目標にしたいという演奏は見つかりませんでした。手持ちのLPやCDではリパッティ、クラウディアアラウ、ルービンシュタインを聴いてきました。Youtubeでは昔の演奏家でブライロフスキー、イングリッドヘブラー、ギオマールノヴァエスらの演奏が見つかりました。やはり素晴らしいです。ショパンのワルツがいかに魅力的であるかが伝わってきます。この曲を弾いた演奏が全てアップされているわけではないのですが、語り継がれるような名演奏はそうざらにはありません。私の知らない演奏家でジャンミコーという方の演奏も素晴らしかったです。
この曲が映画の中で使われていたことも知りました。数年前に話題になったような記憶がありますが観ていません。ラマン、ジャンヌモローのナレーションということでも興味があるので早速レンタルショップに行ってみます。
2013.9.5
錯音? その2
結果は添加剤を注入する前のタイムより向上することは一度も無く逆に低下した。しかし低下と言っても計測の誤差、運転の出来不出来の誤差範囲だろうと思われる。どちらの車両もである。フィーリングと計測は一致しなかった。アイドリング時や低回転での摩擦は確かに少なくなって効率が上がったりして低速時のフィーリングや性能が向上しているのかも知れないが計る方法はあるのだろうか?関連した話だがオイルの抵抗がエンジンの高速回転時には馬鹿にならないので、レーシングカーでは低粘度のエンジンオイルを使う。通常の運転では高速回転より安全性とか耐久性を考えるので適切な粘度が必要である。常識的なエンジンオイルの粘度よりずっと低粘度なオイルに交換してタイム計測をしたことがあるが明らかにエンジン性能は向上した。また耐久性でなく一時的なエンジン性能を求めてシリンダー内のピストンにあるオイルリンクを直径の小さなものに交換したこともある。通常はエンジンオイルがガソリンと一緒に燃焼すると不完全燃焼で排気ガスが汚れたりするのでオイルを掻き落せる適切なサイズのものが選らばれているのだ。このガタガタのオイルリンクも摩擦の軽減効果が大きいので明らかなエンジン性能の向上があった。低速回転時と高速回転時の違いもあるのだろうけれど物理的変化とフィーリングが大きく異なる例と言える。またエンジンの性能を上げる手段としてアーシングというのがある。太い線材さえ入手できれば簡単に行えるので今までずっとやってきた。これは極太スピーカーケーブルへの期待と良く似ている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0
アーシング対しては賛否両論があるがオーディオのアクセサリーと全く同じことだ。過去に数台の一般車両に施したがアーシング直後としてはトルクの増加、レスポンスの向上などが体感できた。しかしタイム計測はしてはいない。多分前述のオイル添加剤と同様の結果が出るのは明らかだ。アーシングがエンジンの点火系の改善につながるのは容易に想像できる。点火プラグの性能や、種類でエンジン性能がかなり変わるのは周知の事実だからである。フィーリングが良くなったからと言って計測できる物理的性能に即つながらないのはエンジン添加剤と同じだ。現在所有の車だがはたしてアーシングの効果が今も持続してるかどうかは解らない。外してみた結果で解るかも知れない。多分少しフィーリングが悪化するのかも知れないが。オーディオでもこのようなことはいくらでもあるのだろう。でも誤解してはいけないことは自動車は殆どの場合にエンジン性能を上げる効果のないアクセサリーはインチキであるということではないからだ。物理的な性能アップが無くてもフィーリングが良くなるということで価値がある。
オーディオではどうなのだろうか?
続く
2013.9.3
オーディオ物語 音の秘密 その10
さてマランツ7の音の秘密はどこにあるのだろうか?他のアンプと異なる点は多々あるが、真空管が外部から簡単に抜き差し出来る機能がある。横に並んだ真空管のソケットが一つのベークライト製ベースに取り付けられていて真空管独特のマイクロフォニックノイズの軽減のためにゴムクッションでフロートされている。このゴムクッションがポイントなのである。オリジナルのクッションゴムが傷んだからといって決して似たようなものに交換してはいけない。カートリッジのゴムダンパーを思い浮かべれば答えがある。光悦という日本製のカートリッジの初代製造者、菅野氏から聞いた話だがダンパーゴムを制すればカートリッジを制すという業界のいわれがあるらしい。そのくらいゴム固有の音質調整は難しいらしい。初代製造者の菅野氏は私に言った。理想的なダンパーゴムは蒟蒻ですよ、乾かないようにすれば最高のものです。出会った当時はまだオーディオ経験も中途半端であったのでこれが冗談であったのか本気だったのか判断ができなかった。光悦カートリッジの磁気回路の部材が日本の大手金属会社のパーマロイの音ではないかとうっかり口にした私はその後の彼との不和の原因を造ったことに気づかなかった。音の機密に関することは簡単に口外することではないという社会ルールを学習したのはずいぶん後の話だ。精神年齢が一般と比べ非常に遅れていたのは間違いないと今では認めてはいる。
マランツ7はゴムクッションのおかげでアコースティックフィードバックによる害を益に変換していたのだ。単なるマイクロフォニック防振クッションではない。このような隠れた音質への関連は他にもたくさんある。そのうちの一つに過ぎない。レプリカ7やキット7のゴムクッションがオリジナルと同じものであるはずはない。セレクトスイッチから出た配線はウレタンフォームでダンプされているではないか?後にも先にもウレタンフォームで配線材をダンプしているアンプは見たことはない。モニタースピーカーシステムでは内部の吸音材を利用してネットワーク素子のダンプを行っていると思われるのはあったが。またマランツ7には配線図にはない電子部品も現物にはいくつか付いている。真空管のシールドケースの金属も重要だ、似たようなものでは役に立たない。音響製品の銘器の金属は全て管理されていると思うのが正解だ。セレン整流器については入手できないからといってダイオードに変更するなど論外である。全く異なる音になってしまう大きな原因の一つだ。またマランツ7のイコライザー回路は配線のやり方により浮遊容量が変化する。配線図にはない小容量のコンデンサーによる音質調整とみるか単なる配線の仕方の違いと見るかは自由なのだけれど。書けばきりの無いくらい音質に関連することが隠れている。マランツ7を創り上げているのは細かい配慮の積み上げ、すなわちセンスが全てなのである。音質の秘密はなんだろうと考えて調べだした途端に秘密は逃げていくのだ。マランツ7の音の秘密を解明できるほどの人ならマランツ7以上の全く別なコントロールアンプが造れるに違いない。それほど素晴らしいものなのである。
続く
2013.8.27
無理を言ってスピーカーリベラメンテ試作段階でのヒアリングをお願いしました。
クラビベースのプレゼントがご縁でメールのやり取りが始まり、どのような装置なのか、どのような音楽を聴かれるのか?全く不明なままでかなり心配しましたが好評なので安心しました。
不安があるというのは自信が無いことなのかな?でも音や音楽には好みがあるので絶対はないから自信より不安が正直なような気もします。最終結果の製品にどうかご期待をお願いします。
「新潟のSです。
今回はSPリベラメンテ(プロトタイプ2.6m)のモニターに選んで頂き、ありがとうございました。
まず当方の試聴環境です。
SP:エラック 330CE(+純正スタンド)
AMP:ラックスマン L-507u
PLAYER:ノートPC→USB-101→CCV-5→DAC-1(USB-101、DAC-1にはABS-7777のクロックを導入)USBケーブルはワイヤーワールドのもの。
※他、アナログ、デジタルケーブルはリベラメンテ。
変則の8畳洋間、オーディオ専用ルームではなく、特に特殊な音響パネル等も入れておりません。
一番好みの曲はボーカルもの。他ピアノソロや小編成ものの音楽が好み。Jポップ、クラシック、ジャズと聴くもの自体は雑多。
ちなみに比較することになってしまうSPケーブルは某社の太いケーブル。(市場価格は定価で10万円越えです)SP側がバイワイヤリング対応のため、アンプ側がシングル、SP側がバイワイヤリングというちょっと特殊なケーブルです。
今回お借りしたSPリベラメンテはシングル接続のものでしたので、SP側は付属のジャンパー線(金メッキのバーではなく、ヴァンデルハル製)を用い、たすき掛けで接続しました。たすき掛け以外も試しましたが、一番しっくりきたのがたすき掛けでしたので、感想はたすき掛けのものです。
さてSPリベラメンテに変えた第一印象ですが…。
個人的にSPケーブルはケーブル類の中でも電源ケーブルと並んで、一番変化が大きい個所だと思っています。リベラメンテシリーズの効果も体験しています。エージングもあまり必要ないことも知っています。しかし今まで使っていたSPケーブルは10万円越えですよ。(もちろん高ければいいものでもないですが…。)
それなのにまさか、繋いで「すぐに」、さらに「こんなに」変わるとは思ってもいませんでした…。(エージングに関しては全くの新品ではないでしょうが…。)
始めに聴いたCDは耳タコ、もといリファレンスの川江美奈子『letters』。全編ピアノとボーカルのみのシンプルな曲編成です。一聴してレンジが少し狭まったような感じがしましたが、これがボーカルが前に出てくる!いや奥行感も出ているから、違うか…。芯があるというか、エネルギーが強いというか…。
こんなに違うとは…!もちろん良い方向で…!
早速、他の好物のボーカルものを含め、色々なCDも聴いてみました。
録音状態が違うので全て同じとは言いませんが、共通しているのは、オーディオ的に言うと、根本的に音のエネルギー感が上がった(後にも述べますが、単純に濃いとかでは無いです…。)、空間表現力の向上と音の分離が良くなった(これらも本当は簡単には延べられませんが…。)が挙げられます。
ボーカルものは声に活力があり、臨場感が上がり、ボーカルが立った(光が当たった)曲になります。ボーカルものだから当たり前ですが。これが今までありそうで無かった表現です。単純に奥行感が出るとか、声が前、後ろに行くというような表現では当てはまらない気がします。
また音の中域のみが出ているといったアンバランスさではなく、音の中域という美味しい部分を出しつつ、しっかり上と下も出ています。(自分の場合、前のケーブルと比べて多少レンジが狭まったかな、と感じましたが、全く支障がないレベルです。)そのバランスが絶妙です。
上記の変化はボーカルものだけではありません。ピアノソロであればピアノにスポットが当たります。かと言って、複数の楽器編成のものであっても、そのスポットライトを上手にバランスして当てていると思います。自分の場合ボーカルものが一番分かりやすかったです。(幸田浩子『ふるさと~日本のうた~』より、「花は咲く」は感動しました。歌が心に刺さります。)
次に空間表現力の向上という点です。
特にライブものだと、雰囲気がよく感じられるようになり、まさにライブ体験をしているような気がします。平面的ではなく、立体感が出ていると思います。しかし極端に生々しいというわけではありません。分離感も良いので、以前よりもこの曲はこの楽器が鳴っていたのか、コーラスでこんな人が歌っていたのか、という気付きが多くなりました。しかしこれ見よがしではありません。これらもSPリベラメンテの効果なのでしょうが、ケーブルの直接の効果なのか、エラック330CEというSPの力をさらに引き出した結果なのかは分かりません。
このSPリベラメンテはオーディオ的に言っても、上記に述べたような「エネルギーが濃くなった」とか「空間表現力が良くなった」効果がありました。しかしそれは違う側面、あくまで付録的なものであり、そもそもの音楽の表現力の向上があったために、付随的についてきたものだと思います。またその表現力の向上というのがかなり今回はハイレベルでした。分かりにくい表現ですいません。要は高音が出るようになった、空間が上下左右に広がった、音像が濃くなった…、等のそれらオーディオ的表現のために作ったものではない、ということです。
って、まさにそれはインフラノイズの社是でしたね(^^;
実際、色々な曲を聴いて、コンプレッサーが強くかかっているようなCDは、前述してきたようなバランスがアンバランスになり上手く聴けませんでしたし、逆に今まで魅力を感じなかったCDが見つかったりしました。(水谷川 優子『歌の調べのように』チェロの演奏なのですが、正直録音はまずまず良いけれど、何だか淡白であまり聴いていなかったのですが、瞬間々々でこんなに音の変化=スペクトラム、があったのかと気付かされました。)
このSPリベラメンテ、自分好みでダントツに良くなったのですが、どう言い表して良いのか、分かりませんでした。が、結論は、まさに音楽を鳴らすためのケーブルであった(ここまで書いておいて、結論がこんなものですいません。)、ということに帰結し、そして猛烈にこのSPリベラメンテが欲しくなったということでした…。
最後にマイナス点を挙げるならば、被覆に他の色のバリエーションが欲しかったことです。他の色は作れないのでしょうか。SPがブラックなもので個人的にはブラックが欲しいです。」
2013.8.26
錯音? その1
オーディオにはオカルトと分類されてしまうアクセサリーはたくさんある。これらはプラシーボと馬鹿にされがちだが実際に効果があるのが普通で効果がないものは殆どない。ではこれらはいったいなになのか?効くのか効かないのか?と懐疑的な性格の人は答えをすぐに欲しがる。人間の感覚など曖昧なのは解ってはいるがいざ自分が見た、聴いたと実際に確かめたことは簡単には否定できないのが正常である。奇跡もお化けを見たのも自分が体験したから信じているのである。人の話や理屈より自分自身の経験が優先する、この場合自分自身の錯覚や判断ミスの可能性は殆ど考慮してはいない。この現象の応用?言ってはいけないがそれこそオーディオ市場にはいろいろなアクセサリーがあふれている。貼り付けたら音の良くなるシール、塗ったら音が良くなる塗料、塗ったら音が良くなる接点復活剤、部屋の中に入れただけで音が良くなる物体、ケーブルに被せるだけで音が良くなる巻物などそれこそ数えることが出来ないくらいある。さきほど言ったように効果のない詐欺的なものはまずないと言って良いだろう。ここで言う効果とは良い悪いではなく変化が認められるという意味であることが重要だ。でも差があることと値打ちがあることは別だ。好き嫌いという個人の価値観を認めてしまえば値打ちは定めることが出来ない。食べ物やお酒と同じで好き嫌いでなく多数決、歴史、文化レベルなど抽象的な評価基準があることを認めないと話は始まらない。
オーディオ以外での私の体験を思い出した。今はもうやっていないが自動車レースばかりやっていたことがある。仕事はそっちのけで頭の中はそればっかりだった。エンジンオイルに添加するだけで内部の摩擦が少なくなってエンジン音が静かになる。テフロンとかカーボンナントカという超微粒子がベアリングになって摩擦が少なくなるからだと言う。これには嘘はないと思う。でも疑わしいのはエンジン性能のアップである。馬力やトルクが向上し体感上でエンジン性能が上がるというものもある。これまでそれを半分信じてドライブショップで新しいのを見つけるたびに購入、エンジン音が静かになったと幾度となく喜んだことがある。もちろん日常のドライブでの話だ。さて集大成としてレーシングクラブの仲間と実験してみようということになった。まず2台のレーシングカーに有名な海外製のテフロン系の添加剤を入れた。2台ともすぐにエンジン音が静かになった。空ぶかしをするとなんともレスポンスが良くってワクワクしてくる。さあではタイム計測をしようということで0スタートから100mでの実測をした。二人ともスタートは競技をやっているのでベテランである、タイヤを出来るだけスリップさせないで駆動の効率を優先するのである。一般車とは違い左右の回転が変化するデフレンシャルギアがノンスリ(ノンスリップディファレンシャルギア)に交換してある車両だ。添加前にどちらの車も5回づつ計測を行っていた。結果はどうなったと思われるだろうか?摩擦が減って静かになったのできっと加速も向上するに違いないと大いなる期待があったのである。
続く
2013.8.22
オーディオ物語 音の秘密 その9
私はマランツ7を入手したときに持ち上げてなんとと軽いアンプなのだと思った。電源を入れてさあ聴こうとヴォリュームを上げた時に感じた。恐ろしく静寂感のあるアンプなのだろう。少し後で気づいた。静寂感はS/N性能が良くて無音であるからではなかった。無信号時の残留雑音の音質が静かなのである、静かで感動させる、安心感のある、きれいな音質なのだ。でもその時から後アンプの残留雑音を意識して聴いているわけではないこともあるが、マランツ7以外で美しい残留雑音に気づいたことはない。音楽を鳴らさずとも音楽的なアンプだったのである。S社ではこのマランツ7のデザインをベースにしたのではと思えるコントロールアンプがあった。デノンPRA-1001 コントロールアンプと同じく最高級クラスのものである。マランツ7がどちらかというとシンプルなフロントパネル構成であっても動きを感じさせるダイナミクスがある。一方のS社のコントロールアンプのデザインは落ち着いた配置であるかつ静的なものだ。動きがないとも言える。マランツ7の模倣ではなく別の次元で完成されたフロントパネルデザインとも言えるだろう。一方は動き、一方は止まっている。浮世絵的な静止ともいえる。S社製の高級コントロールアンプのフロントパネルデザインを完成させたのはS社でも皆から一目をおかれるアップフィールド氏だった。アップフィールド氏の母上はアールヌーボーの流れを受け継ぐ画家だった。その芸術的素質を受け継いだのがアップフィールド氏だ。静的な雰囲気はなぜ生まれるのか不思議に思った私は恐れ多くもアップフィールド氏にたずねてみた。普段そのような会話が社内にないのか氏はなぜか饒舌だった。まずフロントパネルの大きさを決めその枠内に実際に使うノブやレバー、ボタンを並べる。チェスのごとくいろいろ動かしておよその視的バランスを定める。シンメトリーかシンメトリーを崩すかもその時の感覚しだいで1mm単位で位置を追い込んでいく。最後に全体を引き締めるための濃い色の部品やロゴマークの位置を決める。この位置はアールヌーボーの芸術家が浮世絵から影響を受けた手法と似たところがある。母から習ったその手法、まさに日本画の最後のしめは落款の位置なのである。最後に印をどこに持ってくるかで完成度に差が出る。氏はオーディオアンプのデザインにこの手法を応用したのだ。また氏の話はなぜ静的なフロントパネルデザインが生まれたのかをも語っている。そうだ日本画の世界だったのだ。こんな風にフロントパネルデザインが決まってから内部の構成部品の配置を考える手順でマランツ7が生まれたとはどうしても思えない。武器である拳銃には美しい形をしたものがたくさんある、武器としての目的をつめていくとダイナミクスから美が生まれる。では美しいデザインを決めた後に武器としての目的をつけていく手法はどうなのか?まさに現代の道具にはこの二つがある。道具としての目的から生まれたものとマーケットで好まれる製品の販売目的で生まれたものだ。マランツ7は目的から生まれ、S社のコントロールアンプは市場での成功を目的として生まれた。オーディオ製品として見るならどちらが正しいかは判断できない。また芸術作品である必要もない。しかし時間の経過とともに芸術作品として残っていくものもある。
続く
2013.8.21 電気音響について
敗北宣言や偶発的マイクロフォンセッティングが証明するように高いレベルの演奏家によるアコースティックな演奏では音響機器や音響技術の意味が薄れることは否定できないようだ。もう一歩進めて演奏家は従で楽器がイニシアティヴを取った演奏を考えてみよう。とてつもない値段のつくヴァイオリンの銘器、ガルネリデルジェスやストラディヴァリウスをレベルの高いヴァイオリニストが演奏した録音はいくつかある。その場合は曲や演奏より楽器の音に重きがおかれるのは致しかたない。歴史的銘器の音に後から音響機器の音を付加してもっと音質がアップすることはあるのか?スピーカー、マイクロフォンと音の出口と入口だけみても完成された楽器の素晴らしい音色や強烈な立ち上がりを捉えたり、再生できるとは思えない。入口と出口だけでもこんな調子だからその間に入る増幅機、録音再生装置などの個性で楽器の音質を向上させることは不可能であるのは明白だ。ライブミキサーの方が感じられたことは正しいのである。上の例とは逆でとても高いレベルのピアニストが調律の完全でないオンボロピアノを弾いた場合はどうだろうか?オンボロピアノの美しくない音も、不完全な調律をも利用するがごとく使いこなし感動的な演奏を残した場合には歴史的銘器を演奏するのと同じ以上の完成されたものが残る可能性もある。これもまた音響機器や技術の介入でより良い演奏音に変化させることは出来ないのである。良い悪いではなく忠実性の問題である。一番難しいことである。
上記の結果から再生装置を理想化するにはソースには電気音響を用いない高いレベルの演奏や歴史的銘器の演奏を利用して機器の選択やチューニングを行うことが現実的だ。もちろんクラシックに限ることはない。電気音響を用いた演奏でない点が重要である。この場合の電気音響とはマイクなどの録音装置は意味しない。エレキギターやシンセサイザーのように電気を用いて増幅し最終的にスピーカーから音を出すものを電気音響という。アコースティックでの演奏を実際に生で聴いてはいないのでないか、それでは比較できない?という反論があることだろう。しかし高いレベルの生演奏を聴いたり、歴史的銘器に接する経験を積めば電気音響では決して得られないレベルの演奏が存在することが理解でき、また経験により自分自身の中の固定的比較基準が向上する。生の演奏と直接比較する必要はないのである。高いレベルの演奏、歴史的銘器の音を基準にしてしまえば、音を聴いた自分自身の判断だけでより高いレベルでのオーディオ装置のセッティングが可能となっていくのは明白である。再生装置の音を自分で加工、修正するのではなくて高いレベルの基準に近づけるという行為である。これが高忠実度の意味である。録音再生装置の物理的性能だけを意味する言葉と誤解されているだけである。高忠実度とは本当は最終的には関わる人の感性に依存するのは間違いない。
終わり
2013.8.19 電気音響について
オーディオの趣味とは本来音楽を聴くための道具が進化して趣味の機器になっているものとも言える。カメラの趣味などと同じで撮影するための道具が進化して操作して楽しむ趣味の機器になっているのと同じだ。もちろん機器を集めたり、操作したりする楽しみと音楽を聴く楽しみを線引きして区別することは出来ない。音楽を聴くのが目的か、道具を操作することが目的かを区別は出来ないがどちらに偏っているかは見分けることが出来る。LPやCDのソフトの購入にかける金額や時間と道具にかける金額や時間の比率である。どちらも個人の楽しみであるからあえて区別する必要はない。演奏家、スタジオ技術者、機器開発者などのプロはどうなのだろう。理屈で設計する開発者、演奏技術が売り物の演奏家、機器の知識を自慢する技術者。こちらもさまざまで区別する必要はない。
録音側にしろ再生側にしろ演奏の内容?に機器や技術者が干渉してよいのだろうか?
音が良い、悪いは好みの世界であるが、演奏の内容はすでに演奏家の意図があるので後から良い音、良い表現をつけ加えることは許されることなのだろうか?
最終的に音響機器から演奏音が出る電気楽器やマイクロフォンを使用するヴォーカルでは演奏に良い音、良い表現を付け加えることは許されるのかもしれない。もちろん演奏家はスピーカーから出る音が自分の最終演奏音であることを確認しながら行っていることが前提だ。そのためにステージ上にはかえりのスピーカーがあるし、場合によってはスピーカーに変わるヘッドフォーンやイヤホーンまでが演奏のフィードバック内にある。
ただしその演奏時の音響機器が理想的な性能のものではない場合にはかえって録音された演奏に再生用の音響機器の良い音、深い表現が付け加わったほうが良い結果が出ることもあるのではないか?
そうなるとオーディマニアがこのベースはこんな風に鳴って欲しいとか、AさんのリスニングルームではこのCDが素晴らしく鳴るので自分も同じように鳴らしたいと思うのも無理はない。ソースにより演奏音への介入は現実にはあり得るし、またオーディオマニアは自分で機器を選択したり、インシュレーターを変えたり、ケーブルを交換したりして良い音、好みの音に近づくように努力をする。この場合は演奏に介入することは許されるのだろう。オーディオ雑誌でどなたかが言い出された造語で有名なのがある。レコード演奏家という言葉だ。演奏者側からみれば演奏的なことはなにもしないで音を変えるだけなのに、演奏家などとは不思議なことに違いない。しかしオーディオマニアとしてはオーディオ趣味としての介入があたかも創造行為、芸術行為と錯覚した喜びがあるに違いない。レコード演奏家と呼ばれて得意になるだけである。商業主義の中で生まれた巧みな造語なのだろうか?具体的に演奏された内容に介入できない例はすでに紹介した。
続く
2013.8.18 電気音響について
ライブミキサーの山崎氏が書いておられた文を引用させていただく。
出典:プロサウンド誌 2013年8月号 北から南から より
「別府で行われているアルゲリツチ音楽祭のお什事をいただいてこれで4度目となった。今回はチェロのミツシャ・マイスキ一氏とのデュオ・リサイ夕ルと、チャイコフスキ一のトリオという贅沢なブログラムをアルゲリツチ氏が演奏した。とくに今年二人のオフィシャルコンサ一ト35周年というデュオ-リサィ夕ルは、その正倒的な音楽に打ちのめされた感じであった。まずはアンサンブルの!微妙なニュアンスが、それとなく合ってしまったり、普通では考えられないような柔らかい音色で演奏したと思えば、へツドホンが壊れるのではないかと思うような鋭い音色のフォルテが聞こえてくる。そのすべてが、音楽的であること。ここが天才たちの違いだろう。 (中略)
しかし年を重ねるごとに思うことが、今年は確信に近くなった。それは、自分の仕事が彼らのような天才的な演奏家の手にかかると、いかに無力で、録音という作業自体が無意味に感じられるということだ。自分自身を否定することではなく、電気音響を使用しないクラシック音楽の本質は、演奏家から何も関与しない同じ空間と時間の中でのみ存在する芸術であるという現実である。もちろん、毎回周到な準備と現在考えつく最高の収録機材を揃えライブ演奏会の録音を行う訳だが、本番が始まった瞬間、自分がさっきのリハ一サルまで完璧に仕上げたはずのバランスやミックスが全て無意味だったほどの音楽が聞こえてくるのだ。近接のマイクのパランスをとっていても、スピーカーからは、まるで客席の一香遠くに置いたマイクが拾っているようなピアニシモが聞こえてくる。リハーサルまでトリオのバランスは完璧にしたはずなのにメチャメチャな音像が聞こえるのだ。もちろん、収録後、リミックスすれば何とか普通の人たちが変なバランスにならないように修正することは可能だが、ライブミキサーとしての自分は徹底的に打ちのめされた。もしかすると、彼らのような演奏家の録音自体、本当は意味を持たないのではないかと思う。
(中略)
ここで、全くの私見だが、電器音響を使って演奏することを前提に作られる以前のクラシック作品は、天才的な演奏家の手によって演奏された場合、我々の仕事は無意味と化かすと確信した。敗北宣言である。」
続く
2013.8.16
お盆休みで普段の生活のリズムが変わったのと猛烈な暑さで更新が滞った。
このジャケットのシュタルケルといえば、コダーイ、ピリオド盤と連想してしまう。モノーラルLP時代の名録音の代表盤に間違いはないだろう。また録音した人がバルトークの息子ということも有名になる一因だったのだろう。歌い文句は松脂が飛び散る音とオーディオマニアを魅了するものだった。私もこの録音を何度も聴いてオーディオマニアとして成長してきたわけだが、?マークはあった。後に日本でステレオ録音した同曲をヴィクターで販売したがこれは松脂は飛ばなかった。多分録音が上手なのではなくてシュタルケルの若き日の情熱で松脂が飛んだのだと勝手に解釈していたが先日その謎が解けた。シュタルケル本人がその時のことを詳しく書いていたのを読んだからだ。
愛育社 ヤーノシュ・シュタルケル自伝より
(ピーター・バルトークのスタジオは、1つは機械用、もう1つはマイク用の2つの部屋からなっていた。そのマイクは古い映画で見かけるような単一指向性のものだった。その部屋には1台の(時にはニ台の)ピアノが置かれていて、箱やら道具類やらが詰まっていた。反響については?そんな話は誰も聞いたことがなかった。無伴奏ソナタの録音を始めると、私たちはテープの音質がひどく悪いことに気づいた。私たちは1時間もかけて私自身およびマイクの位置を動かし続けたが、なおも音は良くならなかった。マイクは単一指向のものだっただけでなく、その高さも調節できなかった。そこで私は予備のマイクを持っているかとピーターに尋ねた。持っている、と彼が答えたので、私は、第一マイクの脇に椅子を置き、それに第二マイクを立て掛けて、1つが高音を、もう1つが低音を拾うようにしてはと提案した。その何年もあと、マサチユーセッツエ科大学を訪れた際に、私はこのレコードがハイファイ録音の優れた実例として使われていたことを知らされた。これこそ、ストコフスキーの多重マイクによるオーケストラの録音と並ぶ、ステレオ・サウンドの先駆けだと言う者さえいた。いやはや!)
続く
2013.8.9
さてクラシックライブの印象だが、とてもエンジョイできた。崩すことなくきちんとクラシックの演奏をされたわけだが演奏してるメンバーは少し緊張はあったが聴かせようと意識せず自分たちで楽しんでおられた。これが大切なことだ、一般的なクラシックのコンサートでは演奏家が聴衆を意識するのは普通、聴くほうも聴いてあげようとする。なんとか成立しているその関係が愉快ではない。中身のあるコンサートはもちろんこうではないが。
第一ヴァイオリンのお若い女性が弾きまくるので残りの方はふうふう言いながら付いて行ってるという感じは否めない。弦楽器はスポーツと同じ要素があって体力も若さも、もちろん練習も関係する。でも堅苦しい楽譜を弾くメンバーでなかったのはうれしかった。Oさんの腕では販売を目的としたCD録音はどうかなと失礼ながら思ってたのだけど、このカルテットなら録音してもいいなと思った。もう少し練習してもらってタンゴで音が切れ込んだら出来るだけオンマイクで録音しょう。次回は小型の録音機で96Khzでメモリーへ録音してみたいのでまた近くでやってください。
2013.8.8
Classical Music をライヴハウスで聴く〜シリーズ1
■7月12日(金)Yett Quartet演奏会(弦楽4重奏)
open19:00/start19:30/fee¥2000(+1drink¥500)
Live:前川友紀 / 前川英子 / 大竹 徹 / 山口 健
「クラッシックの主に室内楽をBlueEyesで演ることは、かねてからの企画でもあった。実際、移転前の烏丸時代に行った経験もある。今回、即興現代音楽で当店に出演したヴァイオリニスト、大竹 徹さんの協力で、初の弦楽四重奏の演奏会が決定した。ライヴとは言わず演奏会という棲み分けは、クラッシックの印象を強くするためだろうけど、次回からは敢えてライヴという表記を使いたい。そもそも、そういうカテゴライズが変にクラッシックを一般の音楽リスナーを遠ざける要因の一つになっているのだと思う。肩を張らず、それこそ美味しい料理とお酒で楽しむ音楽なのである。定期開催のメドはまだもう少し先にはなるが、BlueEyesでのクラッシック率は確実にUPして行くだろう。今回、大竹さんは本来楽器のヴィオラを担当するとのこと、また、クラッシックと一般音楽リスナーとの垣根を払拭するようなMCもお願いしている。演奏内容によっては本来のスタンディングオベーションが体験出来ると確信している。観て聴いて、そして楽しむクラッシック弦楽四重奏をよろしく。」
と主催者も楽しみにしていると思われるクラシックのライブ?に行ってきた。出演者は先日ブログに紹介した親友のOさんである。大道芸人の彼がカルテットでヴィオラを弾く珍しい演奏会で、彼にとっては今やどちらが本職なのか外からは解らないが本業のクラシックの演奏なのだ。ただパンフレットにはpresented by 狂人企画とあるので一般的なクラシック愛好家ならここで引いてしまうに違いない。
続く
2013.8.6
オーディオ物語 音の秘密 その8
オリジナルマランツ7とレプリカ7,そしてこのデノン製プリアンプの3台を代わる代わる聴き比べるという楽しいヒアリングになった。氏常用のデノン製プリアンプだが今まで殆どがクラシックでの再生であったが私も音質にこれという不満を感じたことはなかった。まずレプリカ7をデノンと交換した。意外なほどに差はない。ただしレプリカ7には固有の音色がある、暖色系というか、真空管の音というか少し丸くてナローな感じがある。でも比べればの話で、もし比較しなかったらそんなに悪いものではない。使用されている真空管はヴィンテージものではなく、入手の容易な共産圏製の新しい球だと思う。これをオリジナル7に使われているようなクラスのヴィンテージ球に交換したらどうなるかという考えも浮かんだが、二人ともこの場で差し替えようという気持ちはなかった。それは次に聴いたオリジナル7の音が言葉で表現のしようがないくらいに抜きん出ていたからである。このオリジナル7に使われているテレフンケンやRCAの真空管をレプリカ7に差しても音質は変われどその魅力的な鳴り方までが移行するとはどうしても思えなかったからだ。それほどまでにオリジナル7の鳴り様は素晴らしかった。イイセビンスキー氏の目はすでに虚ろであった。私の宝物のオリジナル7をどうにかして手に入れようと思っているのは間違いなかった。でも私がどれほど大事にしてここまで運んできたかを知っているのでそれだけは言い出せなかったようだ。なぜメーカーがわざわざ部品を探してまで復刻しようとしたレプリカ7とオリジナル7がこれほど差がつくのかその理由を考えてみたくなった。幸いマランツ7のイコライザーはNF型イコライザーの教科書でもある。この回路で大勢のアマチュアがイコライザーを組んでいる。果たしてマランツ型イコライザーの回路がマランツ7の音質を特長づけているのだろうか?CDなどデジタルオーディオ登場前の時代だからそのように誤解されたのだろう。イコライザーを使用することの無いCD再生でもマランツ7は素晴らしい音質であるし、レプリカ7に大差をつけるのである。
2013.8.5
その後しばらく聴いてみた。モーツアルトピアノコンチェルトや室内楽を小音量で聴く限り満足できる鳴り方だ。でも20Wもあるので音量をあげるとたちまち問題が出てくる。低音の鳴り方がおかしい。取ってつけたようなボコボコの低音である。中音以上の自然な音質とは全くかけ離れた低音だ。低音楽器の倍音が無い。まるで今時のカーオーディオ用で音質とは関係ないと思えるドーム上のものが、相当重量があるように感じる合成樹脂のドーム?がわざわざウーハーのコーン紙の前についている。これを取り外してベースのありふれたコーンスピーカーに戻せば多少の音圧バランスは崩れても変な感じは消えるのは間違いないだろう。やりたいがやらないでおく。スピーカーリベラメンテの効果は特別な個性を持たせた低音用ユニットの音を強制的に変える力までは無いということが解ったからである。
このようなウーハーユニットを採用した理由も、先日書いたようにスピーカーでB&O的な再生音を狙ったからかなのか?
カーオーディオではないのだから、デザイン優先でウーハーユニットを開発する理由は無いはずだ。
あえてウーハーユニットの写真は掲載しない、それをやれば分析、研究は嫌がらせになる可能性がある。
2013.8.1
スピーカーリベラメンテの発売も間近であるので、いろいろな組み合わせでテストを繰り返している。昨夜は自宅の高級ラジカセクラス?のミニコンポでテストした。10年以上前のCDとカセット用のものでデザインはかなりデンマークB&Oを意識していたと思える。本家のB&Oは確か50万円くらいした超高級ミニコンポだった。デザインは素晴らしいもので音は国産の同じようなものと比べて音楽がちゃんと鳴るものだった。B&Oの音質は開発時にいろんなジャンルの音楽で10人以上のスタッフの耳で仕上げられると言われていた。独創的なオーディオメーカーの音質が開発時の個人の決定による現実とはかなり違う。かたよらない、ジャンルを選ばない優れた音質を狙ったものといえる。しかしこれは裏返せば、個性のない、欠点のない面白くない音ともいえる。破綻のない再生音なのだ。この反対の音と言えば、例えばローサー、グッドマンAXIOM80,ジェンセン、JBLなどが思い浮かぶ。オーディオマニア向けの音質ではなくて家庭用、音楽好きなオーディオマニアでない広い層をターゲットとしているのは明らかである。国産のミニコンポ、あるいは皮肉にもオーディオコンポが音楽の鳴らないものが殆どだったことを考えるとB&Oが素晴らしい出来であることは否めない。
自宅の高級ラジカセは同じような製品と比較し値段が高い、デザインも良い。デザインだけを意識してB&Oを目標にしたのか?いや音質を考えるとそうではなかったと思える。刺激的な音が一切しないのである。その結果もっさりした、ヴェールを何枚もかけたというのか?痒いところには絶対に手が届かぬイライラした音しか出ない。逆に言うと真正面から音楽を聴くのでなくて、BGMに徹した音なのである。おとなしいと言えばそうかもしれない。破綻のない音である。
ではB&Oと同じような音であるのかというと、そうではない。破綻のない音であるが音楽もBGM過ぎてB&Oとは雲泥の差である。いったいこれはどうしたことなのか?これはあくまで私個人の想像ではあるが、開発の担当者がB&Oを意識した高級ラジカセの企画でかなり音質を追求したのではないか?B&Oと良く似た音を追求したに違いない。当時の技術、いや今でもだがアナログのカセットはともかく、CDを通常の回路設計で鳴らせばまともなスピーカーであればあるほどやかましい音になっていく。現在発売されている国産のプリメインアンプで通常のCDプレーヤーからの信号をローサーPM6のスピーカーで再生することを考えればお解かりになるだろう。
ではこの開発担当者は悩んだ末どう対処してこのようなおとなしい?再生音を創ったのか?
スピーカーリベラメンテの試作ケーブルを付属の長さ30cmくらいのツィストペア線と交換した。
オーディオでのテストはもう何度も行っていたので予想はついていたが、この交換だけでB&Oと比べましょうよと言いたいくらいの効果は生まれた。でも自宅のオーディオ装置とは違う、音圧とか質とかとは別として抑圧感が残っているのだ。これまでのテストではスピーカーリベラメンテの効果は音のいろいろな要素に働きかけ当然ダイナミックレンジとかも非常に向上するのは確認していた。ところが抑圧感、鳴りきらない感じが。ヴェールは剥ぎ取られているのにこれが残っている。スピーカーのフロントグリルを剥がしてにらんで見た。見えたぞ、貴方のお尻尾がー。家庭用の高級ラジカセには決して見られないものがくっついているではないか?
透明フィルムのドームツィーターの前になんと樹脂性のイコライザーが付いているではないか?
高額な外国製のハイエンドスピーカーシステムにはよくあるあれだ。まさか飾りがフロントグリルの内側に必要なわけはないだろう。思い切って取り付けステー部の片方をニッパーでちょん切って3mmほど前に動かした。乱暴だがこれはカンである。
結果は小型装置としては聴いた経験のない不満のない再生音になった。本家B&Oも逃げ出すに違いない。
開発担当者は凄腕の人だったのだろう。スピーカーユニットで目的を達成していたのだ。
最近この会社のオーディオ製品を開発していた方々がひょんなことにインフラノイズ製品を愛用してくださっている。今度お会いしたときにこの高級ラジカセの担当者さんのことが解るかもしれない。奇妙な楽しみが出来たものだ。
2013.7.31
先日ブログにクラビベースという製品を開発し製造していたことを書いた。
ピアノを弾かれる方でご興味がお有りなら在庫が少し残っているので差し上げますという内容だった。幾日かしてずっとインフラノイズ製品をご愛用いただいている新潟のS様から電話をいただいた。お送りしようと倉庫を調べたらアプライト用は全く無かった、思い出してみればアプライト用を出荷したのはわずかで殆どがグランド用だった。コンサートグランド用の三角形のものも出荷は少なかったのだ。取り合えずグランド用のものを4個用意することにした。問題無く設置できたかどうか心配であったが後日連絡があって上手くいったとのことで安心した。その日のうちに丁寧な内容のリポートをいただいたのでご紹介することにした。スタインウエイ社も最近また経営が変わるとのこと、ベーゼンドルファーなど老舗のメーカーも大変だったようで時代の変化なのだろうが、寂しい思いがする。クラビベースはピアノだけに限らずいろんな楽器に応用が効くのだが、残念だがもう製造することもないだろう。
以下S様からのリポートです。
「クラビベース」を譲って頂きました、新潟のSです。
感想を述べようと思っていたら、早1ヶ月が経過してしまい、音沙汰もなく、返事が遅くなりすいません。さて、まずは当方の使用環境から述べたいと思います。私が使っているピアノはY社のアップライトピアノ。(新品で、購入からちょうど1年位という、音の変化の激しい個体です。)そしてその足元は純正品のプラスチック製のインシュレーター→防音と床保護のための表面がカーペットのような生地で出来ている厚さ約2㎝程のマット→床…となっています。今回、そのインシュレーター部分を交換することになります。今回インフラノイズ様より”クラビベース”を譲って頂くことになりましたが、残っているのはグランドピアノ用のみとのこと。アップライトは足が4本。グランドは3本。当然個数が合わないのですが、そこはインフラノイズ様のご好意でクラビベースを4つにして頂き、晴れてアップライトに使用することになりました。また“クラビベース”はその木目の方向で音の広がり方が変化するとのこと。しかし今回は縦方向が実施出来ず、マニュアルに書いてあった標準の置き方?である横方向のみでの感想となります。(インフノライズ様、すいません。)もう一つ付け加えますと、当方ピアノを始めたばかりで、腕は素人も良い所、また音の違いを明確に聴き分けられるような凄耳や表現も持ち合わせておりませんので、そこはご了承下さいませ…。
以下、“クラビベース”に交換して、1ヶ月程使用してみた感想です。
一聴して感じたのは響き、余韻が長くなったかな、と感じたこと。激変という所までは行きませんでしたが、交換した直後、この部分に関しては私でもすぐに分かりました。仮に同じピアノが2台あり、同じ環境でインシュレーターのみを交換し、比較をすればその違いを感じることは容易なことだと思います。私の場合、部屋がピアノのみで使っているわけではなく、色々な物も置かれており、どちらかといえばデッドな環境ですので、これがもっと開放的で響きのある空間であれば、その違いはさらに明確だと思われます。
次に音質の変化というのでしょうか、それについて述べたいと思います。
元々私のピアノは良い意味で「大らか」で「暖かい」表現が得意と感じています。逆に悪く言えば、音が曖昧でハッキリ、スッキリしない、抜けが悪いというのでしょうか。”クラビベース”に交換後はその「大らかさ」、「暖かさ」がより感じられるようになり、今一つスッキリしない部分を抑えてくれたように感じます。上手くバランスを取ってくれたと思います。これはちょうど今回の”クラビベース”の「柔らかく上品。素直な響き」という特徴が出たのではないかと、勝手に納得していました。「柔らかい」=「暖かい」、「スッキリしない部分を抑えてくれた」=「素直な響き」、「上品」は奏者の腕がもっと上手ければ気付くかもしれません(^ ^;
最後に効果の強弱についてですが、ピアノということで、元々天板を開けて響きを拡散させるという機能があります。つまり単純に2種類の音の広がりのパターンがあるわけですが、”クラビベース”に交換してからはこの2種類の効果の強弱により差が出るようになりました。”クラビベース”は足元に敷くインシュレーターということで、天板を閉じた方が音のエネルギーが足元に行くためなのか、交換した効果(”クラビベース”の特徴)がより実感できた気がしました。(当然天板を開けた場合も効果が出ていますが、あくまで効果の感じ方を比較した場合です)
スタインウェイやベーゼンドルファーは弾いたことがないので分かりませんが(笑)、総合すると当然良い結果になりました。なかなかピアノの腕は上達しないのですが、より”クラビベース”の特徴を生かせるように精進したいと思います。
この度は貴重な製品を頂き、ありがとうございました。
2013.7.30
オーディオ物語 音の秘密 その7
クリーンウェル氏は開発室ではもっとも無口な人であり、目立たない人でもある。特に奇妙な行動を取るわけではないが、自分の結婚式の日をなんと公にしたのが式当日の1日前だった。明日はこの理由で休みますと突然申し出て室長が唖然としたのは有名な話であった。帰宅した私は夕食も忘れて3つの回路を見比べた。コンデンサーや抵抗の値を記入してなかったならこの音質差はパーツなどの物理的な違いによるものだと片付けていたことだろう。集まったスケマティックは量産の部品の値が記入されたものであったのが幸いした。クリーンウェル氏の回路だけが部品の値が違うのである。特に電源回路のCRが上位2機種と異なる。貿易担当者としては海外に出すスペアーパーツの準備などに非常に手間でいやなことなのだ。電圧の違いによる変更、基板スペースの問題などとは思えない。特に互いに影響するCRの時定数が妙に気になる。通常なら時定数など無視する電源部なのだがなにか一定の法則?あるように見える。3日後に競合家電オーディオメーカーのエンジニアである友人の池山君とあってこの事実を話した。彼は大きくうなづいた。クリーンウエル氏はひょっとして天才なのかもしれない、電源を利用してハーモニクスのコントロールを行っているようだ、そんなことが出来るなんて今まで気づかなかった。その後池山君の勤める会社のアンプの音質が良くなって売れ出したことはまんざらこの一件と関わりがないとは思えない。またクリーンウエル氏がS社の解散後にどうされたのかも全く耳にしない。
続く
2013.7.24
オーディオ物語 音の秘密 その6
S社に勤めて3年が経過した時不思議なことに気がついた。新製品のアンプはその当時ではだいたい3年くらいのスパンでモデルチェンジしていた。最初に販売数の見込めない高価格のモデルを発表する、少し手を抜いたデザインの中級機、低価格機を次に発表する。何とかシリーズと名前をつけてオーディオ雑誌で高価格モデルの記事をオーディオ評論家に書かせてそれにマニアは憧れる、しかし高価すぎるので中級なら中身もそれほど変わることはないと自分に言い聞かせて中級モデルを購入する。これがシリーズもののビジネスの手口だ。しかしS社での不思議は一番安価なモデルのほうが音質が良かったことだ。日本向けの貿易担当だった私は残業でディーラー向けのサービスマニュアルを作成していた。サービス体制が出来ておらず扱い製品のスペアーパーツ及びサービスマニュアルを早急に用意せよとの強い要望の故だった。そのために製品の配線図や資料は真っ先に私の手元に届くのだった。TR式のプリメインアンプ最上級モデルは米国での売価は1500ドル、中級は1000ドル、安価なモデルは400ドル程度だった。競合メーカーのアンプも同じような価格体系である。何が違うので値段の差があるのか?主な違いは重量、大きさ、デザインであり物理的な差はパワーだけである。多少は高級品のほうがツマミの数も大きく、機能も増えている。高級モデルは左右100W,中級は60W,安価なモデルは30Wであり当然電源トランスの容量も比例するので重量の差に関係してくる。大事なことは基本的な回路構成だ。回路設計の手間を省くために当然出力回路以外は全く同じだ、多少変更するほうが基板設計から部材調達までコスト削減にはならない。基本的な回路構成を理解した上でこの3機種の試聴を試みた。製品の理解よりむしろ個人的な興味からであった。S社としては音質の優れるものは高級品から順に少しづつ音質の差が生まれて欲しかったのが本音だろうが、担当者はわざと音質を落としたりはしない。なにしろ開発室内では個人がデスクの引き出しの鍵は必ず閉めていた。個人、個人の設計の秘密があったからだ。何をそんなに秘密にしたいのか、このへんの事情にも興味を持っていたのも否めない。ヒアリングの結果は差は少なからずあった。安価モデルの音のバランスは最高であり石臭い音が少なく、クラシックのソースでは大きな音質の違いがあった、アンサンブルの能力の違いだったのかもしれない。いわゆるハモリが出るか、無いかである。高級モデルと中級モデルは大差はない。出力回路の差、部品の差なのだろうか?しかし安価なモデルが良いというのはうなづけない。回路が簡単、接点数が少ない、基板やシャシーの共振の差とかでは片付けないと思える音質差がある。そこで閃いた、安価なモデルの担当者のクリーンウェル氏はそうとうな変人であることからだ。
続く
2013.7.22
豚足とか熊の手とか動物の手足は害して美味しい部分のようだ。
昨日の日曜日に娘の家族が花鳥園に連れて行ってくれた。神戸市はなかなか企画が上手い。天井から垂れ下がった無数の草花が特長のようで全体の美しさに感心した。底の浅いプールに大勢が足を漬けているので、てっきり足湯だと勘違いし近寄ってみたらとても大きなドクターフィッシュの池だった。孫はペンギンを観に行ったので家内と二人で試みた。以前より興味があり試してみたかったが、すでに終了していたり満員とかで経験がなく印象深かったのである。鯉そっくりなきれいな色の個体や、かなり大きな魚も多いので見たことのあるのと大分様子が違う。足をつけてみるとすぐに寄って来てつついてくれる。最初はくすぐったいというより、少し痛い、しばらくして慣れたがそれでも大きさが20cm以上のがくると恐怖感がある。その口で食われるとかなりのショックと痛みがある。大きいのはふくらはぎが好きで何度も噛み付いてくる。小さいのは爪の生え際や指先をやってくれるので心地よく有り難い思いである。30分ほど半分辛抱もありながら終わったとたんに隣にいた家内の食われ率が急に増えたらしい。よほど私の足は美味しいのか、恥ずかしい気分であったがなぜか豚足が頭に浮かんだ。帰ってからドックターフィッシュで検索してみたがだいたいが小さな魚ばかりで大きなものの映像はない。花鳥園の魚は毎日人足のえさが豊富なので成長しきっていたのだろうか?
2013.7.19
今朝宇野さんからFaxが届いた。先日のレコード芸術の記事で山之内さんもう一度聴きに来ての反応があったとのこと。それがPhile-Webに出たので御覧なさいとのこと。すぐに電話をした、もうすでに見ました、いろいろ有難うございましたと答えた。
音が良くなったとのことですが、今度スピーカーリベラメンテ、スピーカーケーブルを使えばさらに良くなりますよ、9月にでも持っていきますというとそれはだめだと断られた。
説明の方法を変えて、音が良くなったのでなく自然になったのです、当たり前の音になってきているのです、と嘘ではないが違う言い方にした。でも今回の拒絶は覆りそうにない。まだ発売してない、いや最終の試作も済んでない段階で見事にふられてしまった。
理由はこれ以上音が良くなったら困るの一点張りである。
おまけになにか恐怖感を感じているとのことである。
悲しんでいいのか、喜んでいいのか、本当にわからないこともあるのだな。
2013.7.16
オーディオ物語 音の秘密 その5
イイセビンスキー氏常用プリアンプはTR式でデノンPRA-1001、メインアンプは自作のEL34プッシュプルの管球式だった。デノンのコントロールアンプは当時としては相当な高級品でトップクラスでの音質を意識して造られたものである。イイセビンスキー氏はニューヨークのオーディオショップで何度も視聴を繰り返して選んだものだとご自慢だった。その後経年変化で故障を繰り返したがその度に泣きつかれて私が修理した。トランジスター劣化や接点不良、ケミコンの容量抜けが主な原因だった。音質は可もなく不可もなく、魅力のある音でもなく、極めて真面目なものでどちらかというとスチューダーのプロ機器から音質的魅力をなくして物理性能は同じクラスという感じだった。真面目な音質のオーディオ機器なので現在出回っているスタジオ機器、PA機器と同等な音質の感じがする。魅力はないが別におかしな音はしない。反対に現在のオーディオ機器の多くはこの逆である。物理特性もスタジオ機器と同じく不満はない、ところが音質はおかしいのである。オーディオマーケットとしての製品を考え、コンペティターとの差を考え、オーディオマニアが喜ぶものを造ること、これが至上命令なので個性的な音を造らなければならないと勘違いする。オーディオ設計者は苦労して部品を選び魅力のある音、個性的な音を造ろうと試みる。これが根本的な間違いなのだ。市場にあわせるのでなく、自分でしか出来ないものを造る、結果的にそれが世間から認められるか、認められないかのどちらかという過程で造られるならおかしなものはこれほどは生まれないだろう。芸術全般、音楽ではエンターテイメントの枠からはみ出さない限り本物はない。物理的な性能が全く同じなのに再生音は異なる、当たり前のことで不思議ではないがその理由はと聞かれると答えに困るオーディオ設計者が殆どなのである。物理的な性能も回路も部品も筐体も全く同じにしてぜんぜん違う音にしろと言われたら、はい出来ますと答えるオーディオ設計者は何人いるのだろうか。要するに音楽的な質の差はなぜ生まれるのか?いかなる理由により差が出るのか?それは万人に感じ取られることか?などの根本的な事柄を考えることなく、部品や回路に目がいくからである。
2013.7.8
オーディオ物語 音の秘密 その4
オリジナル7とレプリカ7をオーディオ好きの指揮者で友人のイイセビンスキーと一緒に試聴した経験がある。また自作マニアがマランツの回路でプリアンプを自作するケースもとても多い。これについてもお話しょう。イイセビンスキー氏はピアニストでもあった。リスニングルームにはシードマイヤーのコンサートグランドが中央に置かれその左右の空間にロジャースL/S3-5A、BBCモニタースピーカーが鉄製のハイスタンドーにのせられていた。いつお伺いしても音質は変化してはいるものの、演奏家の耳が管理しているだけあって自然でかつメリハリのあるのは変わることがなった。訪問したオーディオマニアは自分の装置の音とのへだたりを教えられたせいか、その優れた再生音はスピーカーの真ん中にある銘器であるシードマイアーの共振のせいだと口を合わせたように言ったものだ。この悪口は外れているとも言えない。それが理由であるとも言えないが影響がかなりあることは確かだ。ピアノがシードマイヤーでなくY社やK社のものなら悪影響となったかもしれない。これは想像が可能だ。楽器としての良い悪いは別として、楽器は演奏あってのものだから音色の美しい楽器が優れていることの絶対的理由ではない。しかし銘器とも言われるような楽器はだれが弾いて、いや触れて音を出すだけでほれぼれするような音が出るものもある。シードマイヤーはまさにそれであった。この固有の良い音色がLS3-5Aの音質をさらに高めていたことも充分に考えられる。ギターやヴァイオリンをスピーカーの前に置くことにより再生音は大きく変わるのは間違いない。また調弦するか弦を緩めておくかにより音質は微妙に変化する。しかし楽器の値段に差があるのだからどのような楽器でもスピーカーの前におけば再生音が向上すると思うのは早計だ。ちなみにそのアイデアを生かした楽器はすでに存在する。
2013.7.5
オーディオ物語 音の秘密? その3
デモストレーション会場にはおよそ50人くらいのオーディオマニアと思える人たちが集まった。女性はいない。当時はまだCDは一人前でなくて自社製のアナログプレーヤーを使っていたように思う。スピーカーについても全く記憶はないが多分これも自社製品だったのだろう、それもかなり大型のだ。ビバルディの四季で始まり、クラシックその他取り混ぜて進行して行った。約2時間で試聴会は終わった。鳴き比べを期待していたマランツ7は横にかざってあるだけで鳴らす気配なく過ぎてしまったのである。だがアナウンスはあった。マランツ7をお聴きになりたい方はお残りください。たった3人が残ってやっと鳴き比べが始まった。今になって思えば自信は無く、鳴き比べてプラスにはならないとの判断をしていたのか、その場の雰囲気で聞き分けるような人は少ないとの担当者判断かは解らない。新製品のTR式はなんとも無表情な冷たい音だった。しかしこれは最新技術の成果で、無色透明な音なのだと説明がある。マランツのほうは暖かく響きがあり、音楽を感じさせられた。真空管は歪やノイズがあるのでこのような音になる、後から付加された人工的な色づけなのであるとのことだった。科学、オーディオの進歩とは音をこのように変化させるのかと、腑に落ちない思いいだきながらも理屈の前には抵抗は無駄だった。感覚的にはTR式の優位性は微塵も感じられなかったのに最新技術とL社の自信にたてつく勇気は全くなかったのである。これはその後ずっと自分の感覚を信じ切れなかった情けなさとして付きまとうことになった。会社への報告書作成は苦痛そのものであった。その後マランツ7に挑戦したL社製アンプを使い続けている方がいるとか、オークションで高値が付くとか、音質が良いとかの評判があったとは全く聴かない。一方のマランツ7はマランツ社でキットを販売したり、レプリカを出したりしたがそれらの音質が満足出来るものであったとか、オリジナル7と同様の音質だったとかの評判も全く聞かない。オリジナルのマランツ7は程度がどのようなものであれ中古品は殆ど出てこず、とんでもないプレミアが付いている。これはいったいどういうことなのか?私はその後入手したマランツ7とマランツ8をサブシステム用のアンプとして所有している。
2013.7.3
オーディオ物語 音の秘密? その2
とにかくオーディオ黄金時代で造れば売れる時代だった。サンヨー電気の米国工場でテレビを製造している友人のA君は私に本物の刻印WE-300B、1ペアをプレゼントしてくれた。自分が持っていてもしかたないし、いくらでも手に入るのだからという理由である。仮に代金を支払ったとしても10ドルくらいだったに違いない。先日ガレージでそれを発見した時は光輝いて見えた。A君ありがとう、申し訳ない気持ちだ。真空管アンプはまるで時代遅れのように思われていたので間もなくS社は真空管アンプの製造を中止した。大手家電メーカーのL社などは新製品のTR式プリ、メインアンプの発表会であのマランツ7、8Bと鳴き比べる企画をやったくらいに半導体はトレンドだったのだ。L社の新製品のプリアンプはちょうどマランツ7くらいの大きさでメインアンプはモノーラル出力150W、これもマランツを意識したのかマランツ9とほぼ同じ大きさの四角い箱であった。L社は自信満々でこの新製品の発表会をニューヨークのカーネギーホールのすぐ近くの豪華なホテルの会議室で行うと発表した。なんとその歌い文句はマランツ7、9と鳴き比べます、愛聴盤をどうぞお持ちくださいとの高飛車なものだった。開発担当のビガータウン専務は私に必ず行くように指示した。入社したての私はオーディオ業界はもちろん販売店にさえ顔を知る人はいないのでその任務は持ってこいだったのだ。